s'il vous plaitその後の2人
その後の2人
クリスマスイブに恋人が出来た。
年末年始は家族で過ごした。
でも今年初めての言葉はちゃんと言えた。
「明けましておめでとうございます、沖田さん」
「明けましておめでとうございます、神谷さん」
他愛もない会話をしてその日は電話を切った。
あれから一週間以上、音沙汰無し。
「こっちから電話するべきなのかなぁ?」
はぁ、と重い溜め息を吐くセイは里乃の家に遊びに来ていた。
学校が始まってすぐ里乃に総司との事を聞かれた。
そして元旦の出来事を話した。
「それで?」
「それだけ」
「今日まで?」
「それだけ・・・」
しゅんとうな垂れる親友を見て「今日はうちで相談会しよ!」と言われた。
「んもう!あの人は何しとるん!」
「でもさ・・・私あんまり沖田さんの事知らないんだよね」
「それはこれから知ればええ事。いっぱい聞いてええんよ?」
「そうかな?」
「何言うてんの。2人は付き合ってるんやから遠慮なんてせんでええの」
「そっか・・・」
紅茶を飲みながらセイは鳴らない携帯をじっと見た。
それに気付いた里乃が一言。
「見てても何にも鳴らんよ」
里乃の厳しい一言に反論できないセイだった。
「せや!電話がダメやったらメールしたらどない?」
「ええ!?用もないのに失礼じゃない!?」
「用が無いなら作ればええんよ」
「??」
「デートのお誘い、したらええ」
総司の携帯には似合わない可愛い着信音がした。
あいにく本人は不在で、近くにいたのは土方だった。
「なんだ?メールか?」
総司の携帯を勝手に開いて中身を確認する。
『沖田さんへ
今お時間宜しければ電話してもいいですか?
セイより』
「随分固ぇ文章だな」
これが噂の総司の彼女か、と土方はニヤリと笑う。
「あ!勝手に私の携帯見てる〜。プライバシーの侵害ですよ?」
「ひとんちに勝手に泊まりに来るやつに言われたくねえな」
「ちゃんと来る時連絡したじゃないですか〜。女性がいたら困りますもん」
「ほう?自分は女を放っておくくせにか?」
ニヤリと笑い、先程届いたメールを突きつける。
総司はその内容に呆然としながら慌てて携帯を取り返した。
「おら、さっさと電話してやれ」
「しろって言われても・・・何話せばいいんですか?」
「そんなん俺が知るわけねえだろ」
「歳三さんのいじわる・・・」
そう言いながらも携帯をじっと握り締め、セイの携帯の番号を押した。
「返事こない・・・」
「今、忙しいんと違う?」
「そうかな・・・」
勇気を出してメールしたものの未だ返事が来ず、セイは再び落ち込み始めた。
鳴らない携帯を見ながら呟く。
「沖田さん・・・」
その言葉に返事をするかのようなタイミングで着信音が鳴った。
ディスプレイには『沖田総司』の表示。
「ほら!返事きはったよ!はよ確認してみ?」
「違うよ里ちゃん!これ電話だよぉ!」
「電話!?ならはよでな」
「えええ!?急に無理だよ!」
「ええからはよ出て!」
「そんな心の準備が・・・」
そんな言い合いをしているうちに着信音は終わってしまった。
「出ませんでした・・・」
あからさまにガッカリする弟分に土方は必死で笑いを堪えた。
いつも飄々としている総司だが、恋愛事にはやっぱり疎い。
こんな風に一喜一憂する姿はいつ振りに見るだろう。
携帯を握り締め、じっとディスプレイを見つめる総司の姿は犬のようだ。
「迷ってるんならさっさと掛けろよ」
「ん〜考え中です」
「そんな脳ミソあったのか?」
「苦手でも考える時もあるんですぅ」
ぷ〜っと盛大に頬を膨らませ睨む総司だが、土方には通用しない。
「ホント意地悪さんですね」
ねえ神谷さん?と携帯に話し掛けると先程と違う着信音が鳴った。
「電話来ましたっ!」
「いいからさっさと出ろ」
「でも何話せばいいんですか?!」
「知らん!いいから出ろっ!」
半分土方に脅されながら通話ボタンを押した。
「もっもしもし!」
「あ、セイです。こんばんは」
ようやく総司が電話に出たらしい。
里乃はコタツで頬づえをつきながら2人の様子を見守った。
「あ、えっと、あのですね・・・」
初々しいなぁと思いながらも進展しない2人の会話にイライラする。
ふと手元にあるメモをみつけ、里乃はこう書いてセイの肩を叩いた。
『はよデートに誘い!』
「でででででで」
急
に里乃に急かされたセイは一気に緊張してしまった。
「電話!急にしてごめんなさい!」
「いえ、いいんですよ。私も声が聞けて嬉しかったです」
さっきまで緊張してたくせになんつー台詞をいいやがる、と土方は思った。
これなら多少イタズラして少しは動揺しやがれと総司にむかってこう言った。
「今から会いに行けよ」
「会いたいって言え」
「会って抱き締めてそれから―」
「ああもう黙って下さいよぉ土方さん!」
土方さんて誰ですか?
電話から聞こえてくる総司の声ともう1人の男の人の声。
どうやら総司は誰かと一緒にいると言う事が分かった。
そしてその人の名は『土方』と言う事。
遠くから聞こえる2人の口論に最初は慌てたけど、
聞いていて仲がいいのだと分かった。
「羨ましいなぁ・・・」
思わずセイは呟いてしまった
。
『何が羨ましいんですか?』
息を切らせながら総司が聞いてきた。
「え?!聞いてたんですか?」
『ええ、すいません。土方さんがちょっかい出してくるんですよ』
「仲いいんですね」
『そうですね。お兄さんみたいな人なんですよ』
「そうなんですか」
『ところで羨ましいってなんですか?』
「沖田はんと一緒にいれて羨ましいって意味どす」
横から総司に聞こえるように今度は里乃がちょっかいを出してきた。
『え?今のって・・・』
「里ちゃん!急に何言うのよ〜」
「ほんまのことやろ〜」
今度はセイの方で何やら言い合いをしている。
呆然とする総司は先程の里乃の言葉が頭でリフレインしていた。
そして急にこう言った。
「神谷さん、一旦切ります!あとで掛け直します!」
そう言うと電話を切り、土方の方を向いた。
「・・・なんだよ」
「土方さん。折り入って相談があります」
「もう!沖田さんから電話切れちゃったじゃない!」
「掛け直すゆうてたやんか〜」
「そうだけど・・・」
「
ほなゆっくり待っとこ。
今お茶入れ直します」
それから10分後、ようやく総司から着信が来た。
携帯をじっと握り締め、セイは一呼吸して通話ボタンを押した。
「もしもし」
『あ、神谷さん。先程はすいません』
「いえ!大丈夫です!」
『その・・・ですね。神谷さん今度の休みは土曜日でしょうか?』
「え?あ、はい。土曜は休みです」
『予定、とか入ってます?』
「いえ!全然大丈夫です!」
『良かった〜。あ、えとですね、その・・・』
「はい・・・」
『会えませんか?』
「会いたいですっ・・・」
気付いた時にはもう涙が出ていた。
会いたくて会いたくて、我慢していた。
『私も、神谷さんに会いたいです・・・』
必死に声を出そうとするけど、涙声でうまく返事出来なかった。
『また明日電話しますね。おやすみなさい』
「はい。
待って、ます。おやすみ、なさい」
電話を終えて涙をふく。
里乃がハンカチを差し出してくれた。
セイは里乃を抱き締めてまた泣き出した。
「お疲れ様。セイちゃん」
そう言って里乃はセイの背中を優しく撫でる。
セイはそれに甘えて気が済むまで泣き続けた。
一方、土方&総司コンビは初デートへむけて入念なプランを立てる事になった。